セルロイドとアセテートは、どこが違うのか

燃える樹脂と、燃えない樹脂

厚いべっ甲柄テンプルの先端の接写。層の深みと濡れたような艶
厚いべっ甲柄テンプルの先端の接写。層の深みと濡れたような艶

眼鏡の枠に使われるプラスチックは、大きく二つに分けられる。セルロイドアセテートである。どちらも綿花や木材のセルロースを原料にしており、その意味では同じ出自を持つ。しかし性質はかなり違う。

決定的な違いは可塑剤

セルロイドはニトロセルロースに樟脳を混ぜて可塑化したもの。アセテートはアセチルセルロースにフタル酸系などの可塑剤を混ぜたもの。

この差が、そのまま次の違いを生む。

セルロイドアセテート
燃焼性きわめて高い難燃
深く濡れたような艶明るく均質な艶
匂い樟脳の残り香ほぼ無臭
経年縮み・黄変・反り白化・可塑剤の抜け
加工削り出し中心削り出し・成形とも可
価格高い中〜低

セルロイドは、燃える

これは比喩ではない。ニトロセルロースは火薬に近い組成を持ち、着火すると消火が難しいほど激しく燃える。20世紀半ば、映画フィルムの火災が繰り返し起きたのはこの素材が原因だった。

そのため製造・保管・輸送に規制がかかり、扱える工場が限られる。現在セルロイドの眼鏡が高価なのは、素材そのものというより扱える人と設備が希少だからである。

当会では、セルロイド製の枠を持ち込む際の取り扱いについて、席上で確認する慣行がある。詳細は記録に残していない

艶の違いは、密度の違い

セルロイドの艶が「深い」と言われるのは、素材の密度が高く、研磨後の表面が光をわずかに内部まで通してから返すためだ。アセテートは表面で素直に返す。並べて磨けば違いはすぐわかる。

ただしこれは新品の話である。10年、20年と経つと差は別の形で現れる。

経年の仕方

  • セルロイド — 樟脳が徐々に抜け、わずかに縮む。テンプルが反り、フロントが左右非対称になることがある。黄変も進む。ただし縮んだ後の質感を好む向きもある。
  • アセテート — 可塑剤が抜けて脆くなる。表面が白く曇る(白化)。研磨で戻せる場合が多い。

つまりセルロイドは形が変わり、アセテートは表面が変わる。中古を選ぶときの着眼点はここにある。

見分け方

道具なしで判別するなら次の順で。

  1. 匂いを嗅ぐ — テンプルの内側、擦れた部分。樟脳のかすかな匂いがあればセルロイド。
  2. 重さを比べる — 同じ厚みならセルロイドがやや重い。
  3. エッジの層を見る — 板から削り出したセルロイドは、柄の層が断面に素直に出る。

火をつけて確かめる方法もあるが、当然ながら勧めない

まとめ

同じ植物由来の樹脂でありながら、片方は規制を受けるほどよく燃え、片方は静かに白く曇る。どちらが優れているという話ではない。20年後にどう変わっていてほしいかで、選ぶものが変わるというだけだ。