玉型の系譜
ボストン、ウェリントン、ラウンドはどこで分かれたか
眼鏡の形の話をするとき、私たちは「玉型(たまがた)」という語を使う。レンズの輪郭そのものを指す言葉だ。市場には無数の形があるように見えるが、実際には数種の祖形と、その間を埋める変奏があるだけである。
三つの祖形
ラウンド
もっとも古い。真円、あるいは真円に近い楕円。レンズを丸く削るのが加工上いちばん簡単だったという、きわめて即物的な理由から始まっている。装飾ではなく、制約の形である。
ボストン
逆三角に近い、丸みを帯びた形。上辺がわずかに広く、下へ向かってすぼまる。名の由来については諸説あり、当会でも結論は出ていない。顔の輪郭に対して視線を下に集める性質があり、頬骨の高い顔に馴染みやすい。
ウェリントン
上辺が広く、下辺がやや短い台形。角は落としてある。ボストンとの差は下辺の直線性で、ウェリントンは下が直線に近く、ボストンは弧を描く。並べて比べれば一目瞭然だが、単体で見せられると熟練者でも迷う。
見分けの三点
祖形を判別するとき、当会では次の順で見る。
- 下辺が直線か弧か — 直線ならウェリントン系、弧ならボストン系。
- 上辺と下辺の幅の比 — 差が小さければスクエア寄り、大きければ台形が強い。
- こめかみ側の角の処理 — 角が生きていれば意匠として攻めた設計、丸められていれば穏やかな設計。
この三点で、たいていの枠は系統に落ちる。落ちないものは、たいてい意図的に系統を外した設計である。
変奏としての近代
1950年代以降に出てくる形——フォックス、キャットアイ、オクタゴン、パント——は、いずれも祖形の一部を誇張したものと見ることができる。
- フォックス/キャットアイ — ウェリントンの上辺外側を持ち上げた。
- オクタゴン — ラウンドを多角形で近似した。
- パント — ボストンとラウンドの中間で、上辺だけをわずかに平らにした。
つまり近代の玉型は、祖形からの距離として記述できる。これは当会の観測記録が、形状名を単独で書かずに「祖形+変形の方向」で記す理由でもある。
顔との関係について、ひとつだけ
「丸顔には角ばった枠を」といった対比の法則が広く言われるが、当会の観測ではこれは十分な説明になっていない。実際に効いているのは玉型よりも、眉と上辺の距離、そしてフレームの横幅と顔幅の比である。玉型は最後に決めてよい。
この件については別途、測定記録が残されている。
まとめ
形は自由に見えて、実際には制約と系譜の産物である。手にした一本がどの祖形から、どの方向へ、どれだけ離れているか。それを読めるようになると、眼鏡屋の棚は地図になる。