一本を測る、七つの寸法

当会の観測記録が最低限そなえる項目

暗い台に並べた眼鏡とノギスと巻尺を真上から見た計測の卓
暗い台に並べた眼鏡とノギスと巻尺を真上から見た計測の卓

当会に持ち込まれた一本は、席上で観測され、記録に残される。何をどう測るかは様式として定められている。ここではその七項目を、理由とともに記す。

会員以外の方が使っても差し支えない。むしろ、使ってもらったほうがよい。

一.玉幅(レンズ横幅)

レンズの最も広い部分の水平距離。ミリ単位。テンプル内側やブリッジ裏に刻印されている数値の、最初の値がこれにあたることが多い。

なぜ測るか — 顔幅との関係を決める基本値。ここが合っていないと、他のすべてが破綻する。

二.鼻幅(ブリッジ幅)

左右のレンズの、最も近い点どうしの距離。刻印では玉幅の次に来る数値。

なぜ測るか — 眼鏡の高さと安定を決める。鼻幅が広すぎると枠が落ち、狭すぎると鼻梁に食い込む。

三.全幅

フロントの左右端から端まで。丁番(ちょうばん)の外側を含む。

なぜ測るか — 顔幅を超えていると、テンプルが外へ張り出して圧が偏る。玉幅より実用上の影響が大きい。

四.テンプル長

丁番から先端までの、折れ曲がりを伸ばした全長。

なぜ測るか — 耳までの距離と、耳への掛かり方を決める。短ければ後ろへ引かれ、長ければ遊ぶ。

五.玉の縦幅

レンズの最も高い部分の垂直距離。

なぜ測るか — 遠近両用を入れる場合の可否がここで決まる。また視線を下げたときに枠の下辺が視界へ入るかどうかの判断材料。

六.反り角(フロントカーブ)

フロント全体が顔に沿ってどれだけ湾曲しているか。当会では平面に伏せたときの端の浮き量で近似的に記録する。

なぜ測るか — 顔への当たりと、周辺視での歪みに効く。数値化しにくい項目だが、記録がないと後で比較できない。

七.重量

グラム。レンズを外した状態と、入れた状態の両方。

なぜ測るか — 掛け心地の主観記述を、後から相対化するため。「重かった」という記述は、24gなのか38gなのかで意味がまったく違う。


記録様式について

当会の記録では、上記七項目に加えて次を添える。

  • 素材の推定(および推定の根拠)
  • レンズの反射色(視線角度を明記
  • 経年の所見
  • 刻印の転記(読めない字は伏せて記す)

記録の保管および参照の手続きについては、席上で別に定める

測るという行為について

寸法を測ることは、印象を数値に置き換える作業ではない。印象が何に由来していたのかを、後から確かめられるようにしておく作業である。

「この一本は掛け心地がいい」で終わらせず、全幅が顔幅より2mm狭く、重量が26gで、テンプル長が145mmだった、と残しておく。次に似た一本と出会ったとき、それが手がかりになる。

観測は、未来の自分への手紙である。